飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「埼玉県神統系譜」感想

埼玉県神統系譜 (ガガガ文庫 な 8-1)

〈あらすじ〉
高校二年の夏、進路調査票によって生徒たちは人生の岐路に立たされる。己の将来に悩み、不安を覚える者たちもいる中、立花孝介はひとり余裕ぶっこいて泰然自若としていた。白狼神社の一人息子である彼の場合、いずれ実家の神職を継ぐことになるのは自明の理……だったのだが、「うちの神社は今、倒産しかけてんぞ?」。父親の突然のカミングアウトにより、我が家の惨状を知ることとなった孝介。そんな折、孝介は白狼神社境内にて、自分を神社の神だという女と出会う。“千谷の雪花狼”と名乗るその女は、神社の経営を立て直すべく、孝介に神官見習いとして、神社に寄せられた願いを叶えていく仕事の手伝いをするよう要請。「こいつ本当に神なのかよ?」と半信半疑ながらも、彼女を手伝うことになる。かくして今、埼玉の地にて一人と一柱の物語が幕を開ける――!!第9回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞受賞作。

おっと今、埼玉のこと「ダサイタマ」って言った奴、ちょっと前に出ろやコラァ!
……ハッ!これは幻聴。被害妄想でしたごめんなさい。そんな訳で愛すべき埼玉……住むにはとっても良い環境だと思います。都心まで電車で一時間、不動産もそんなに高くなく夢のマイホームを建てることができて、子供と楽しく暮らせる理想郷。はい、理想郷は言い過ぎましたねごめんなさい。

高校二年生の立花孝介は、進路に関しては後々実家の白狼神社を継ぐんだろうな、と漠然とした将来を思い描いていた。しかし父の「うちの神社は倒産寸前」という言葉を聞いてから、将来に対する不安を覚えるようになったある日、孝介は狼のお面を被った白髪の少女・雪花と出会う。雪花は白狼神社の『神』を名乗り、倒産寸前の神社を立て直すため、人々の願いを叶え、神格を高くしようと考える。その手伝いに駆り出されることとなった孝介は、神官見習いとして雪花と共に奮闘する。

正直に言わせていただきます。タイトルを読んだ時の期待感は、あらすじを読んだ時点で薄れ、物語を半ばまで読んだ頃には消えていました。タイトルに「埼玉」とあるのに、その良さが内容に全く出ていないのは……いや、内容のそのものは良く出来ています。それは勘違いしないで欲しい。問題はタイトルに「埼玉」を付けたことによって、読者は、特に埼玉に住んでいる人は、もっと埼玉LOVEを全面に押し出す尖った作品なのでは、と期待しちゃうんですよ。タイトルで示された付加価値が実はありませんでした……これは残念。良く出来ているだけに残念です、特に思春期童貞ボーイが必死になってエッチなビデオ(敢えてこの表現)を見ようと試みる姿は素晴らしかった。

あと地の文がやたら多く、会話文がないとやはりテンポが悪く、退屈になるのは否めないよなあ、と。地の文そのものも上手くできてはいるのだけど。主人公は喋るキャラではあるのだから、もっと雪花との会話の掛け合いを見たかった。新人賞作品だし、次回作は埼玉ネタを盛り込んで会話でも楽しませて欲しいなあ。