飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「六花の勇者」感想

六花の勇者 (六花の勇者シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

六花の勇者 (六花の勇者シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

「私は心を捨てられたわ。人間の心じゃなくて、凶魔の心だけど。母さんに、魔神に復讐するために。捨てたから生きてこられた」
「違うぜフレミー。心は捨てられない。心を捨てようと思うのも、やっぱり心なんだ」
アドレットを見つめるフレミー。その内心が読めない。
「強くなるために全てを捨てる。そんなことはできっこない。誰かを好きになることだけは、どうしてもやめられない」
「………」
「お前が好きだ。ずっと、と言っても昨日からだけど、ずっとお前が好きだった」

ファンタジーと密室ミステリーが融合した、ある意味異色のライトノベル。
面白かった。楽しかった。久しぶりに読んでいて物語に引き込まれる感覚を味わいました。
『地上最強』を名乗る凡人の少年アドレットが持てる知識と技能を駆使して力を魅せ、六花の勇者にひとりに選ばれることから物語が始まる。勝利への手段の汚さから『卑劣戦士』とまで呼ばれるアドレットだが、嘘偽りのない生き方をしている彼に好感を抱く読者は多いだろう。この作品最大の魅力は間違いいなくアドレットの人となり。

普通のファンタジーならば『魔神を倒すために六人の勇者が力を合わせ苦難を乗り越えていく』旅が始まるところなのだが、いざ勇者たちが集まったかと思えば予定されていた「六人」ではなく「七人」で、更には森に張った結界を何者かが起動させ閉じ込めらてしまう始末。
敵の差し金である「七人目の偽勇者」捜しが始まり、真っ先に罠に填められ疑われるアドレットがあの手この手で強力な力を持つ勇者たちの攻撃から逃れ、思考を巡らせて駆け引きし信頼できる仲間を獲得していく様が心沸き立つ。過去のトラウマから誰も信じられなくなったフレミーに真っ正面から「好きだ」と告白し彼女を護ろうと行動するアドレット。お前は何処まで熱いんだ。密室ミステリーだけでなく、心の闇も明かして解放するのかよ。

「七人目の偽勇者」については単純な僕ではさっぱり分かりません。
序盤から怪しかったフレミーとハンス、特にハンスがもっとも頼れる仲間になるのは意外だった。
しかし物語が始まり勇者が集まったときはどいつもこいつも胡散臭い奴等だと思っていたが、真相に近づくにつれて印象がガラリと変わっている勇者が多いことに驚いた。
犯人が分かり、これでようやく『六花の勇者』の魔神退治の旅が始まるかと思いきや…ああ、そういう展開ですか。
次回、どういったアプローチで話を進めるか非常に楽しみ。心情的に今回のメンツに疑惑の目を向けるの難しいぞこれ。
あと毎巻同じ展開のオチにすると辟易としてしまうのでその辺りも意識して話を持って行かないとね!