飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「僕と姉妹と幽霊の約束」感想

僕と姉妹と幽霊の約束 (このライトノベルがすごい!文庫)

僕と姉妹と幽霊の約束 (このライトノベルがすごい!文庫)

紫音が抱きついているつもりでも、今の時間のクロには紫音に触れている実感はなくて、それでもやっぱり女の子に触られているのは落ち着かない。
落ち着かない、けど。
「はじめて、死んでよかったかも、って思った」
まるで構わず、満面の笑顔で紫音が言ってきて。
……まあ、もう少しだけならいいか。なんて思ってしまった。

幽霊が見える高校生クロが教室で出逢ったのは、幽霊になったクラスメートの少女紫音。クロは紫音を成仏させようとするが、それを拒否しそれどころかクロに「生き返らせなさい」と命令する。クロに取り憑く紫音と、幽霊に関わることをを良しとしないクロの三姉妹、そして他の成仏できない幽霊たちを巻き込み、ドタバタと大騒ぎをするラブコメ要素のある青春小説。

成仏したくない幽霊で我の強い紫音にクロが下僕のように扱われるわ弄られるわ。紫音に翻弄されるクロが笑える。彼女のペースに引き込まれるまま他の幽霊たちに関わっていくのだが、家族で「幽霊に関わること」を禁止されているため、クロ同様霊感を持つ姉妹たちが紫音との関係を絶とうとするも、結局はクロを巻き込みラブコメ展開になるのはニヤニヤ出来て良い。三姉妹のブラコンなのと、それぞれの性格があまりに期待通りすぎて悶絶しました。特に緋色さんは狙い過ぎだと思います(笑)
この三姉妹の勢いを見ていると、クロの女性嫌い体質も分かる気が…いやいや、羨ましいだろ。女性であるものの幽霊少女の紫音には霊能力を使い、普通に触れ合える様を見て嫉妬する姉妹たちがまた可愛い。

紫音と関わると同時に他の幽霊たちとも対話し、クロと三姉妹が持つ能力が有効に使われて成仏させる展開は良く出来ていて面白い。
ラブコメ展開で常に物語が進行するのではなく、親友の志郎と紫音の関係やクロの両親の話などが描かれ、最後には驚く切ない展開に導かれる。クロと紫音と志郎の関係に対するモヤモヤを吐き出して、三人が真っ直ぐ前を向けるようになったのは清々しい終わり方だった。
紫音に実は…の設定があるので、続きを書けるように出来ている。けれど綺麗にオチているし、我が儘をいえばこのままひとつの作品として完結で良いと思うのだが。ああ、でもクロ三姉妹のブラコンっぷりはもっと読みたい!