飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「黒のストライカ 4」感想

黒のストライカ4 (MF文庫J)

黒のストライカ4 (MF文庫J)


物語が動き出す。『人』として生きてきた椋郎が大切なヒトを守るため取った行動が、大切なヒトとの日常に終止符を打つ。

今まで繋がりの薄かったヒロイン達を結びつける役割を担うしはる。しはるさんの過去のエピソードから、椋郎のフィルター越しとはいえ彼女の人に対する無垢な優しさが伝わってくる。常識外れではあるものの人懐っこい麗はともかく、椋郎以外を下に見る猫被り無しのシャーリーとも上手くやっているしはるの人としっかり向き合い対話する力は椋郎でなくても惚れ惚れしてしまう。シャーリーは単にツンデレなだけという話もありますが…。その輪に加わらずにいた翠子としはるとの絡みを見たかったな。

椋郎はそんなしはるを除くヒロイン達に対する性的欲求が高まり、更には蝦夷井にまで迫られて苦しむも耐え抜く。前回以上に心の中で言い訳をつけて性欲を押し返そうとする場面が多く、特に翠子の肉感に関しては異常なほど反応している。蝦夷井を椋郎から守ろうとする翠子が一番椋郎を困らせているのは笑える。椋郎は本当にドMなのかと思っていたが、本能に従い肉欲のまま女を貪る『夜魔』としての行為と力を認めることは、しはると生きる『人』としての生を否定することになる、と感じての拒否なのだと気づく。

そのしはるが倒れ、その原因が紅の毒であることが判明するも、紅は既に大罪人として大目天の牢に捕らえられた後。『夜魔』の『眷属』として自分に従うシャーリーを始めとするヒロインとは違い、ひとりの『人』として接して微笑んでくれるしはるさんの優しさを改めて感じながら、彼女を巻き込んでしまった己を呪う椋郎。紅に解毒剤を作ってもらうため、彼女を牢から出そうとするが、それは自分を保護している大目天を裏切る行為であり『人』としての日常の終わりを意味する。しはるのために行動を起こす椋郎であったが、しはるを想い、椋郎を想うヒロインズが黙っている訳もない。『眷属』であるシャーリーと翠子は決して『夜魔』に従っている訳ではなく、椋郎を信頼してついてきているだけ。ただそれだけのことなんだよ。
と、感動の場面であるにも関わらずロックの猫擬人化のインパクトが強すぎて霞むのが。青さんの猫愛がついに爆発したか…!

紅を解放するも、蝦夷井に襲われヒロインズを人質に獲られる椋郎。これまで幾度となく彼女たちに悪態をついてきた椋郎が、その実彼女たちを想っていたことが分かる熱い展開になり、『夜魔』の力で蝦夷井を退けることに成功する。
もともと椋郎と彼女たちには絆があったのを、しはるがお互いに見える形にしてくれた。徹頭徹尾しはるを中心にした物語であった分、最後のシーンは切なくなる。
しかし物語がしはるに向いていたせいで、ジークフリードとタヤチナが学校という日常に現れた重大なイベントに焦点が当たってないな。二人の登場が今後どんな意味を物語に与えるのか注目。

MF文庫Jは5巻に短編集を持ってくるパターンが多いけど、次で短編やるのは流石に辛いよね。個人的には折角物語が動いたのだからこのまま本編を続けて欲しい。