飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件」感想

ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件 (ファミ通文庫)

ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件 (ファミ通文庫)


男の娘モノ…というよりも女装少年モノですか。いや、この二つにどれほどの差異があるか難しいですがね。
野村美月さんということで安心して読めました。この方の文章は頭の中にスッと入ってくる。

万能の天才グリンダ・ドイル。彼女は「今日かぎりグリンダ・ドイルを廃業する」という置き手紙を残して失踪してしまう。同盟国であるエーレンに王室付きの家庭教師として出向する予定だったグリンダ。それを無視して消えてしまったため、エーレンとの同盟関係に亀裂が入ることを危惧した者達が、グリンダの『身代わり』として白羽の矢を立てたのは彼女そっくりの双子の弟・シャーロックことシャール。天才の姉と違い凡才のシャールは、姉の身代わりとして王室の家庭教師になる大任を受けられないと最初は断るものの、国家の圧力に屈して受け入れることに。そもそも性別すら違うグリンダとシャール。が、女装することでグリンダそっくりになったシャールは、個性的な王室の王子王女の家庭教師に就任。グリンダの偽物だとバレたら極刑もあり得る状況下で、シャールはグリンダの代わりを務めることができるのか。

自分の正体が見破られたらどうしよう。このドキドキ感が支配する中で、『天才グリンダ』ではなくシャールという人物がエーレン王室に受け入れられていく様が丁寧に描かれている。
特に初恋を知るのにはちょうど良い年齢の第一王子の竜樹は、心の強い年上の女性(=シャール)には弱いものですっかり惚れ込んでしまった。竜樹かわいいよ竜樹。しかし第一王位継承者としての本当の見せ場は、シャールが男だと分かったときの彼の対応だと思うなあ。
王室唯一シャールを男だと見破った第一王女の聖羅。九歳という年齢ながら、天才的な頭脳を持つ彼女は、何処か世離れした印象は抱き、シャールもまた自分の正体を見破ったことから普通とは違う女の子と見ていたが…聖羅もまた遊びたい盛りの少女であったと知れて、読み手としても何だかホッとしてしまった。この先九歳の彼女がヒロインとなるのか。
失踪したグリンダの真意とは。間違いなく今後シャールに絡んで引っ掻き回してくるだろうから、その展開がほんと楽しみですわ。