飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「彼と人喰いの日常 3」感想

彼と人喰いの日常 3 (GA文庫)

彼と人喰いの日常 3 (GA文庫)

〈あらすじ〉
「主も随分と慣れたものじゃのう、人を殺すことに……ケケケ」
美しき人喰い・黒衣との契約に従い、ついに四人目の生贄を捧げた十夜。徐々にこれが"日常"だと受け入れつつある自分に絶望する日々。
そんな全てを諦めてしまったかのような少年に、それは何気なく、ごく当たり前のように飛び込んでくる――
「十夜君おはよう」
「立夏? なんで…………?」
そこには十夜との記憶を失ったはずの最愛の幼馴染・立夏の姿が!?果たしてこれは、十夜が待ち望んだ夢なのか、それとも一体……?
これは、人喰いの妖とその主である少年の"無情な日常"の物語。
「フム、じゃから人間は面白い」

日常と非日常のコントラスト。それが一番浮き出た表紙イラストになったな。
非日常を生きる者たちが、日常生活を演じ続けているこの物語も3巻目。巻を重ねる事に面白さを増している。
生贄を黒衣に与えることに慣れてきている十夜。彼が苦しみながらも『決断』できる人間であることが、今回の話を通して読者に伝えられる。
十夜にとってもっとも大切なヒトである立夏。突然やってきた転校生・葵…時を同じくして、改変したはずの立夏の記憶が解かれ、再び彼女のいる優しい時間が戻ってくる。まるでハーレムラブコメのような毎日であるが、十夜に決断を迫る時間となってしまった。心地の良い時間を否定して、自分に罰を与え続けるため、葵の提案を蹴り「彼女を殺す」決断をする十夜にぞっとするものがある。十夜をここまで変えたのは、立夏を大切に想う気持ち。お互いを大切に想っているのに、絶対にそれが結びつくことがない。この非情な物語に救いはないのか…葵の人格を乗っ取った存在が姿を現し、穏やかな時間を与えてはくれない。