飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「彼と人喰いの日常 4」感想

彼と人喰いの日常 4 (GA文庫)

彼と人喰いの日常 4 (GA文庫)

〈あらすじ〉
「お父さんも葵ちゃんも私のために殺してくれたんだよね、十夜君?」
「っ!?」
立夏のため……という名目で、人喰いの黒衣と共に幾多の罪を犯し続けた十夜。しかしその一番知られたくない事実を、最愛の幼馴染、立夏は知っていた。さらに追い打ちをかけるかのように、殺したはずの葵までもが再びその姿を現す。だが――
「主よ、これは現実じゃ」
混乱する十夜のそれを砕くように、黒衣の声が響き渡る。全ては自分が選択した結果。ならば今回も選ぶしかない、この美しき人喰いと共に。
これは、彼と人喰いが紡いだ“終わる日常”の物語。
「主よ、わしを信じ、愛してくれ」

素晴らしいラストをありがとうございました。少年と人喰いの非日常もここで終わりを告げる。

幸せになってはいけない。でも幸せになりたい!
深い業を背負い、幸せを求めることは許されることではないと、己に言い聞かせる十夜。しかし立夏とともにいたい…人としての渇望を捨てきれないことに思い悩む。

そんな十夜に、黒衣はキツイようでいて優しさを持って接していたように思える。不信感が付きまとってた黒衣であるが、いつの間にか彼女に対する負の感情が消えていた。それは黒衣さえも凌ぐ力を持ち、黒衣を封印して葵の中で生き続けている『帝』との戦いを通して確固たるものになる。

黒衣を信じた十夜。十夜に信頼された黒衣。
繰り返される非日常の中で二人が培った大切な想い。そしてこの物語の根幹を成す設定が帝に牙を剥いた。

戦いは終わり、黒衣は十夜は「無慈悲な救い」を与える。十夜は日常に還す。立夏とともに過ごす日常に…。
が、しかしその全てが黒衣の優しさを故の行動だった訳ではない。黒衣もまた、十夜と日常を送りたかったのだ。彼に恋する乙女としての日常を。立夏に負けない自分を示すために。

ハッピーエンドは気持ち良い。とても清々しい気分で読み終えることができた。
もう一度言います。素晴らしい物語をありがとうございました。