飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「もえぶたに告ぐ DRAMATIC REVENGE STORY」感想

もえぶたに告ぐ ~DRAMATIC REVENGE STORY~ (HJ文庫)

もえぶたに告ぐ ~DRAMATIC REVENGE STORY~ (HJ文庫)

〈あらすじ〉
萌蔵は学園の皆に好かれる男の娘。
だがそれは幼馴染の少年に復讐するために作りあげた偽りの姿だった。
そんな彼の前に、ある日“萌えの妖精”を名乗る不思議生物が現れて、「萌え集めを手伝って」と告げてくる。
しかし手伝うどころか、そのファンタジーなパワーを復讐に利用すべく、妖精を言葉巧みに丸め込む萌蔵。
果たしてこの復讐は成功するのか!?

常日頃から「ラノベをタイトルで判断するんじゃない!」と言ってきていたのに…へへっ、僕とした油断してたぜ。
はい、すいません。素直に言います。面白かったです。設定だけを読むと無茶苦茶でバカバカしいものなのだけど、しかしその設定を活かし切って最後は綺麗に話を纏めてきたことに感動すら覚えてしまった。エンターテイメント作品として、ライトノベルだからこそ出来たものが、ここにある。

主人公は男の娘である。中には『男の娘』モノに嫌悪感を持ち、興味を失う人もいると思うが待って欲しい。主人公の萌蔵(♂)が女装して生きているのには大きな理由がある。

復讐。
大企業の御曹子である幼馴染の武尊。完璧超人であり、大企業のトップに立つに相応しい冷静な決断力のある武尊を「惚れさせる」ため、美少女顔負けの容姿を武器に迫る迫る迫りまくる。
しかしこれは言った通り『復讐』であるため、武尊を惚れさせた後は手酷く振ってやるのが真なる目的。うん、バカだね。そもそも武尊に憎しみを抱いた一番の理由が「女装した姿をバカにされた」ことなのだから。

そしてバカな設定はこれだけでは収まらず、なんと萌蔵の手引きで武尊を妖精の力によって性転換させてしまう。凄いのは女性になっても武尊の性格は変わらず不遜のまま。当ての外れた萌蔵は肩透かしを食らったどころか、武尊が男に戻るための「萌え」エネルギーを集めないといけなくなり、その対象に萌蔵が選ばれるのだが、萌がさっぱり理解出来ていない武尊の冷徹なアプローチがもうキツイなんてもんじゃない。拷問ですわ。

腹黒萌蔵は笑顔で武尊に応えながら、内心ではストレスで押し潰れそうになっている二つの面が読め、完全に空回りしている萌蔵の姿が実に面白い。男の娘は普通、周囲を振り回すもんだけど、振り回される様も良いものですな。
ある意味でこの物語は人の『二面性』がキーワードになってくる。心の内側ではとんでもないことを考えているのは何も萌蔵だけではない。まあ考えてみれば当たり前。萌蔵の視点では天使のように思われていたキャラクターたちが牙を剥くように本性を現すのちょっとやめて欲しい。ショックです(笑)

様々な人間の二面性に見事振り回されながらも、最後に行き着くのは正直な想いを伝えることだった。これまでの武尊の行動と萌蔵の想いは、最後の展開を多いに盛り上げてくれる素晴らしい装置だった。あれだけ無駄に勘違い萌を仕出かしてきたのに、最後の最後でそうきますか。これは胸キュンしてしまう。惚れるのも仕方ないわー。

読み切ってしまえば、素直になるのが一番だ!と思うのだけど、武尊は苦笑いしてしまうほど面倒な性格してるからなあ。萌蔵と武尊…お前らもう付き合っちゃえよバカ!!