飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「放課後四重奏」感想

放課後四重奏 (GA文庫)

〈あらすじ〉
人間嫌いの高校生、灰堂青は寮を出て、旧校務員室に住む少年である。彼はある日、屋上から飛び降りようとする少女・菜花心月と出会う。
「……見届けてくれますか?」
「断る、勝手にしろ」
「えっ!? あなたには、人の心というものがないんですか!?」
口論の末ふたりはプールへ落下。
その一週間後。彼は長らく避けていた同好会に入ることを担任に強制されそうになる。そこで彼は、誰も近寄らない、ひとりだけの同好会を作ることに。しかし、その会室にいたのは……人体模型に告白する飛び降り少女!?
不器用すぎる少年少女たちが奏でる青春ラブコメ四重奏!

不器用なんだか器用なんだか。
『まだ恋をしていない』主人公から『まだ恋ができない』主人公へ。ぶっきら棒で人間嫌いの高校生・灰堂青と、彼に引き寄せられた三人の少女たちとの青春ラブコメ。

極力人との関わりを断ち、寮ではなく集団生活を嫌い、学校の校務員室に住む変人高校生の灰堂であったが、彼を心配するお節介な先生の罠に嵌り、生徒の悩み相談を主とする同好会を作ることになる。「どうせ誰もこない」と考えていた灰堂の目論見は外れ、相談者が次々やってくるだけでなく、部員も増え始め次第に『SL部』は賑やかになっていく。

灰堂の性格の概要だけを見ると、いかにも取っ付きにくい性格の悪い人間であるように思えるが、しかし彼の言動には『人間嫌い』の一本筋が通っていて、発言が驚くほどブレない。人との対話を面倒に思いながらも、相手を見据えてしっかり自分の考えをぶつける姿勢に、あるいは気を悪くする者も多いだろうが、それでも真摯に相対する灰堂を見直す者もまた多いだろう。

人の悩みを聞く『SL部』には、そんな彼のストレートな物言いに惹かれて集まった女性部員たちのかしましいことかしましいこと。何処か変な悩みを抱える三人の美少女たち…ヒロインに囲まれて、鼻の下を伸ばさない男はいないだろうと思うが、灰堂だけは該当せず、ひたすら揺るがない。

ここまで読んで行くと、ラブコメを楽しむというよりも、灰堂というブレない男が相談者に問いを投げかけられ、どんな答えを返すのかを楽しんでいる僕がいる。これだけ物を言える人間になりたいと、ちょっと羨ましくさえ思う。主人公の魅力にヒロインたちの存在感が霞んでいるように見えるのが、残念なポイントかな。

人と接するようになり、人との繋がりの温かさを感じ始めた灰堂。その温かさを伝える役はヒロイン三人の肩にかかっているぞ。