飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「キスから始まる戦機乙女(ヴァルキュリア)」感想

キスから始まる戦機乙女(ヴァルキュリア) (MF文庫J)

〈あらすじ〉
キス×美少女=戦機乙女(ヴァルキュリア)? 俺、新藤一路は、人間の七つ目の感覚として発見された『テッセラクト視覚』を研究するために開校されたばかりの学園"エピタフ"に入学した。
だが、入学初日の放課後、突如として空を切り裂く程の謎の大剣に襲われる! 何がどうなってるのか理解できないまま辛くも命を救われるが、ロケットランチャーを操る美少女、六道麻奈は俺に言った。
「生き残りたければ作り出せ、戦機乙女を!」
キスから始まる武装バトルファンタジー、スタート!

設定や目的に謎が多過ぎるせいか、それにストレスを感じた。読者に不満を持たれないように情報を適度に与えるのが、上手い書き方なんだろうなあ、と思いながら読みつつ、最後には盛り上がる場面も用意されていたので、全体を通して面白いとは思う。

人間に備わる七つ目の感覚…『テッセラクト視覚』
まだ謎の多いこの感覚が優れている者を集めた学校がエピタフである。特に進みたい先もなく、『テッセラクト視覚』の能力が高いということで待遇の良いエピタフにやってきた新藤一路であるが、入学早々、得体の知れない存在が飛来。『天使』と呼ばれる脅威は、一路の命を狙い、その牙を剥く。そんな絶体絶命の危機を救ったのが、クールな容貌の美少女・六道麻奈であった。およそ女の子が扱う武器ではないロケットランチャーで『天使』を撃退した六道は、一路にエピタフの女生徒にキスをして、『天使』を倒す兵器…『戦機乙女〈ヴァルキュリア〉』を生み出せ、ととんでもないことを言い出す。

『テッセラクト視覚』という謎ばかりを呼ぶ感覚/能力を持つ少年少女たち…とは言っても、ほとんどの『テッセラクト視覚』保有者は女性であることから、学園エピタフに招かれた生徒は女の子女の子女の子!その中に極少数混じる少年のひとりが、主人公の一路であり、『テッセラクト視覚』保有者として、本人は全くの無自覚ではあるが、特殊な存在である彼を中心に全ての物語が巡る。

『テッセラクト視覚』について、具体的な説明がされないまま物語が進行していくのがこの物語最大の欠点であると思う。『テッセラクト視覚』を研究しているエピタフ…六道を初めとする生徒会のメンバーは、『天使』を倒すための手段として、『戦機乙女』を作り出すことを猛プッシュするのだが、その方法というのが『キスをすること』なのだ。『テッセラクト視覚』保有者の女生徒と一路がキスをすると、『天使』を倒せる武器が生まれるらしい。中盤まで読者が知り得る大きな情報がこれだけのせいか、一路が意中の女の子…最上とキスをするために奮闘する姿を集中して読めなかったのは僕だけだろうか?

この物語の売りは、エピタフの女生徒を口説いてキスをして武器を作り出すこと…なのだろうけど、それを純粋に楽しませるにはノイズが多過ぎるというか、エピタフ生徒会の目的をもっと読者に刷り込ませてから物語を転がした方が余計なことを考えずに、楽しく読めた。一路に対してなかなか素直になれない、分かりやすいくらいのフラグを建立している六道に、個性豊かな生徒会の面々、今回の攻略対象である最上など、魅力的なキャラクターが揃っているだけに、この物語の構造は酷くもどかしい。

物語後半で明かされる真実に、一路は悩みながらも生きることを選択。愛する女性と…と、呼べるほど真摯に向き合えないが、気になる女性とのキスにより生み出された『戦機乙女』は武器ではなく、正確には異能力を持つ女の子、というのは面白い設定ではあるが、これ物語進行とともに増え続けるんですかね…?

女性の数とキスの条件、秘められた謎を思うと随分と長いシリーズになりそうなんだけど…大丈夫かなあ(笑)