飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「魔王殺しと偽りの勇者1」感想

魔王殺しと偽りの勇者1 (ファミ通文庫)

〈あらすじ〉
"本当に"大魔王を打倒した勇者を見つけろ――王宮戦士のエレインはその奇妙な命に首を傾げた。十日前、百年に一度復活すると云われた大魔王が斃された。しかし、四名の人物が「自分こそが大魔王を倒した勇者である」と主張しているというのだ。さらに戸惑う彼女に用意された協力者は、王族でありながら魔族に寝返り、牢に幽閉されていた不遜な青年ユーサーで……。果たしてエレインは勇者たちの嘘を暴き、真実を手繰り寄せることが出来るのか? ミステリアス・ファンタジー、開幕。

剣と魔法。勇者と魔王が登場するファンタジー世界を舞台にしたミステリー。いや、面白い作品を読んでいると時間を忘れますね。この没入感が気持ち良い。

聖剣を携えた勇者アルフによって大魔王タラニスは倒された。しかし大魔王が最期に残した言葉通り、百年に一度蘇ることになる。そして三百年後。王宮騎士エレインは国王に呼び出された。三度目の復活を果たした大魔王。その大魔王は、今回もまた勇者の手で葬られた。だが「大魔王を倒した勇者である」と名乗り出た勇者が四人も現れ、誰が大魔王を倒した真の勇者であるか判明していない。エレインはある人物…『魔族』と協力して真の勇者が誰であるかを突き止める任務を与えられる。

真面目すぎるゆえに騙されやすい女性戦士のエレインと、人を食ったような言動をする油断ならない魔族の青年ユーサー。エレインは地下に幽閉されていたユーサーの知恵を借りて、真の勇者を探し出すミステリーだ。剣と魔法のファンタジー世界でありながら、バトル要素は非常に少ない…どころか、現状、回想シーン以外バトルなし。

主に火花を散らすのは、真実を求める言葉と偽りでそれを覆い隠そうとする言葉のぶつかり合い。しかしバカがつくほど真っ直ぐ生きてきたエレインは他人の言葉を疑いもせず受け入れ、腹芸も見抜けない。そんな彼女を補佐するユーサーが溜息を吐いてエレインに嫌味を言うのは仕方のないことのように思えるほど。魔族として生きてきた側の視点を持つユーサーは、人間には見えない真実を炙り出してくれる面白さもある。

真の勇者が誰なのか?
それを追い求める内に、この勇者探しの裏に隠された思惑の姿が見え始める。単なる勇者探しでは終わらず、一体どんな真実をも浮き彫りにするのか。勇者探しについては全二巻予定らしいので、次で勇者は判明するらしいが…それだけで終わってしまってはモッタイナイ気もする。