飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「血潮の色に咲く花は」感想

血潮の色に咲く花は (ガガガ文庫 き 2-1)

〈あらすじ〉
花のためだけに少女は生きる。
人間に寄生し成長する妖花が存在する世界。宿主となった者は頭に仮花を咲かせ、今まで生きてきた記憶を失う。そして花のために生き、花のために死ぬのだ。青年・ルッカは、かつて宿主となった家族を殺した事件以来、宿主を狩り続ける中で自分を認めてくれる存在を探していた。そんなある日、ルッカは街を訪れた少女宿主のリディと出会う。またいつもどおり殺すだけ、彼女がただの宿主でないと気づくまではそう思っていた――。 第8回小学館ライトノベル大賞審査員特別賞受賞作。

さて今年もガガガ文庫新人賞作品出版の季節になりました。もう8回目なんですね。まずは特別章受賞作品から読みましたが…タイトルに「血の文字」があるところが何というか、ガガガ文庫らしいというか(笑)

人に寄生し、記憶を奪うと共に常識では考えられない力を付与された『宿主』。頭に仮花を咲かせた『宿主』は、花を開花され種を撒くことを生きる目的として…死んでいく。青年ルッカは、かつて『宿主』となった義姉を殺した過去を持つ。義姉を変え、平穏な日々を変えてしまった『宿主』を狩り続けるルッカは、ある日リディと名乗る『宿主』と出会う。いつも通り『宿主』を殺す算段を立てるルッカであったが、リディが普通の『宿主』とは違うことに気がつき始める。

ファンタジー世界を舞台にした御伽噺のような物語。タイトルが示す通り、人が死ぬシーンが幾つも出てくるので「残酷」御伽噺といった方が適当かな。ファンタジー世界といっても魔法は登場しない。人が及ばぬ腕力、個体によっては特殊な能力を備えた『宿主』を、薬で強化した肉体と知略を巡らせて討伐する狩人。危険な存在だから、特殊な花は金になるから、ある意味復讐のために…人は『宿主』を狩る、そんな世界だ。

『宿主』絡みの凄惨な過去を持つルッカは腕利きの『宿主』殺し。この物語を最後まで読み切れるかどうかは、このルッカの『宿主』に対する考え方・振る舞いを、彼の過去を考え見て何処まで「納得」できるかにかかっていると思う。僕個人としてはルッカはあまりにも自分勝手な思いで『宿主』を討伐していくので、どうにも好きになれなかった。『宿主』も『宿主』で花を咲かせることのみを優先する奇妙な種なので、「人の感情」を押しつける存在としては間違っている気もするけど。

リディの存在がルッカを変えていく…のだけど、その影響をもっと早く持ってきても良かったと思ったりはした。最後の最後だったので、それまで自分勝手してたルッカを許せない気持ちが先にきてしまうんだよねえ。まあこの辺りは個人の感じ方の違いはあるかな、と思います。