飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10」感想

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10 (ガガガ文庫)

〈あらすじ〉
新しい年、新しい関係、新たなる想い。
冬休み。のんびりとした年の瀬、そして年明け。
合格祈願の初詣や買い物など、予定外の外出が重なる八幡が新年の街で出会ったのは、雪ノ下陽乃と葉山隼人、そして……。
教室で、部室で過ごしてきた時間で、お互いのことを少しは知ったように思えた。でも知らないことの方がたくさんあるのだろう。今も、そしてこれからも。
冬休みが終われば、2年生とという学年ももうあとわずか。新学期にざわめく教室にはある人物の「噂」が流れていた。
望むと望まざるとに拘わらず、同じ場所で過ごす時間は刻一刻と減っていく。
そんな雰囲気だからなのか、奉仕部に持ち込まれた、ある依頼……その依頼は今までに知ることのなかった彼ら、彼女らの別の一面を映し出すことに。
自分のしたいことが、相手の望むことは限らない。本当の気持ちが伝えたい気持ちとも限らない。誰かが知っているその人が、その人の本当の姿とは限らない。
今を大切にしたいと思えば思うほど臆病になって、考えているのに答えは見つからないし、走っているのにゴールが見えない。
彼ら彼女らの、新たなる季節、新たなる関係。

今年最後の更新が俺ガイルの感想になります。そういえば俺ガイルのアニメ2期のPVがコミケで流れたようで僕も観ました。ゆきのんとガハマさんが可愛かった。そして八幡は八幡だったので良かった!(小並感)……はい、これ以上アニメについて語れる人間ではないので、ラノベの話をするよ!

距離感。
この歳になった今でも、人と人との距離感に悩む。他人と親しくなったつもりで接すると、決してそんなことはなくて。あるいは勝手に他人を勘違いして遠ざけたりして。人と人との距離感は何が正解なのか。答えは相手との関係の中で刻一刻と変化し、人を悩ませ続ける。

葉山隼人。
人と人との距離感を正確に見定めて、行動に移すことができる完璧な男……そんな葉山という男はこの物語登場当初は僕たち読者から幾つかの誤解を受けていたと思う。それは葉山を想う三浦に対してもそう……葉山もまた悩む人だった。そうだ、悩みのない人間なんていない。人と人との距離、それが見えてしまう葉山だからこその悩みがある。

八幡もまた、ある意味では人と人との距離感を見ることができる男ではある。でも八幡は葉山のようにはできない。他人は自分が想っているほど自分を想ってはくれない。他人を想っても裏切られるだけだ。どうしても斜に構えて青春を見てしまう、それは八幡の生き方なのだからどうしたって葉山のようには生きられない。八幡が簡単に素直になれる男であるのならば、そもそもこの物語は生まれなかったと思う。雪乃に対して、結衣に対して……他人の関係に対してひとつの願いを口にした八幡。彼だからこそ葉山と対峙することができた。

物語は終わりに向かっている。
この青春は確かに終わりに向かっている。

八幡は、雪乃は、結衣は……彼等の距離感はどんな終わりを見せるのか。彼等が報われる最後であって欲しい。