飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「サイコメ 1 殺人鬼と死春期を」感想

サイコメ 1 殺人鬼と死春期を (ファミ通文庫)

サイコメ 1 殺人鬼と死春期を (ファミ通文庫)

〈あらすじ〉
未成年犯罪者を集めた「プルガトリウム更生学院」。
そこに冤罪で入学させられた神谷京輔。周りを見ると美脚美女にゆるふわ系少女……なのに実は殺人犯。
その上、京輔は異例の《12人殺した殺人鬼》として学院中の注目の的になり、正体不明な巨乳のガスマスク美少女・氷河煉子にまで迫られて――。
死と隣りあわせの誘惑をくぐりぬけ、京輔は無事に卒業できるのか!?
第14回えんため大賞優秀賞受賞。LOVE=KILL!
恋するほどに危険なハードコア系ラブコメ!!

『プルガトリウム更正学院』そこは殺人犯ばかりが集められる、異常な学び舎。
この文章を読んで興味を惹かれない中二病読者様はいないと断言する。歪んだ少年少女たちの青春を可笑しくも血生臭く描いた作品。

殺人を犯した少年少女たちを更正させるための学校…プルガトリウム更正学院。つまりこの学校に通う者は全て『殺人犯』なのだ。
そんな異常極まりない学校に放り込まれた主人公の神谷京輔は、他人よりも頑丈で喧嘩が強いだけの自称一般人。十二人の人間を殺害する派手な罪によって、殺人犯たちが集まる学校でも目立つことになるのだが、京輔は心中穏やかではない。それもそのはず。京輔が犯したとされる大量殺人は冤罪なのだから。血に飢えたサイコな殺人犯たちに囲まれながら、京輔は卒業までの三年間を生き抜くことが出来るのか。

どいつもこいつも頭のネジが数十本単位で緩んでるどころか外れてやがる。
人を殺した人間がまともな訳がない。またそんな人間を束ねる者に歪みがない訳がない。隙あらばクラスメイトを殺そうとする連中に、『教育者』ではなく『凶育者』と言った方が相応しいドSの先生。その最大のターゲットにされるのがクラスナンバーワンの殺害数を誇る京輔。狼の群れの中に放り込まれた羊のように怯える京輔であるが、彼もまた一般人と呼ぶには程遠い腕っ節の強さがある。それがなければとっくに京輔は死体になっていただろう。

その京輔を取り囲むのが、三人の美少女(?)たち。何故クエスチョンが付くのかと言うと約一名、素顔をガスマスクで覆う誰が見ても異常な女の子がいるからだ。顔を見せず呑気な口調で巨乳を押し付け京輔に迫る氷河煉子や、暗殺者の鋭利、天然ドジで人を殺す舞那と過ごす学園生活は、背景に目を瞑ればラブコメなのが怖い。しかし実際は彼女たちには黒い過去があり、正常な少女ではない歩みが存在している。それを意識しながらも満更でもない京輔の精神はかなりタフと言える。

殺人犯…冷たい心を持つ人間たちの中でただひとり男らしくある京輔の姿は煉子・鋭利・舞那の目には輝いて映る。煉子に至ってはその輝きに、これでもかとやられた挙句の狂気を魅せつけてくれる。学院の真実を知り、普通の世界に戻りたい京輔を、煉子の歪んだ愛が、あるいはまだ見ぬ狂気が、彼を殺そうとひたひたと歩み寄ってくる。更なる異常が生まれる予感が次回に期待を持たせる。