飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「軋む楽園の葬花少女」感想

軋む楽園の葬花少女 (電撃文庫)

〈あらすじ〉
葬花少女(グリムリーパー)。それは謎の生命体レギオンから世界を守る最終兵器。レギオンに大敗した人類は、クリサリスと呼ばれるドームで葬花少女達に守られ暮らしていた。
高校生葛見は、事故車を救助中、ドームに侵入したレギオンに襲われる。彼を助けたのは、葬花少女隊(グリムリーパーズ)リーダー・アイリス。
葛見の正義感を認めたアイリスは、彼に協力を要請する。葛見は戸惑いながらも、幼馴染みの少女・春野を守るため戦いに身を投じることを決めるが――?
これは少年と兵器の少女によって花開く、セカイで最後の恋物語。

最近、新人作家さんの名前が覚えられなり、自分の記憶力に絶望することが多くなりましたが…以前このブログでオススメした『シュガーシスター1/2』の作家さんですね。流石に覚えています。

新作ということで『シュガーシスター1/2』の方は終わりになってしまったのかな、と残念に想いはしたものの、読み終えてみるとこちらも読み応えが十分得られ満足できる内容でした。

『レギオン』と呼ばれる異形の怪物の脅威に晒される人類。ドーム型の都市に閉じ籠り、対レギオン用人型兵器である『葬花少女』に守られる人類のひとり、高校生の葛見はある日、都市の内部に侵入してきたレギオンが引き起こした事件に巻き込まれる。絶体絶命の危機を救ったのは、可憐な戦う少女たち。人々からアイドル視される葬花少女たちに助けられたことで、高校のクラスメイトからもてはやされ、幼馴染の春野からは心配される葛見であったが、平穏は長くは続かない。学校を尋ねてきた葬花少女アイリスは、葛見が都市の中にいるレギオンに狙われていることを告げる。助かるにはそのレギオンを討つしかない…己の命がかかっていること、何よりも正義感から、囮になってレギオンを倒す葬花少女の作戦に同意する葛見だが、しかし囮作戦はとんでもない真実を葛見に突きつけることになる。

人類の敵レギオンから人々を守るために築いたドーム型の都市クリサリス。人々のヒーローであり、アイドルでもある葬花少女。そして平和のはずのクリサリスの中でレギオンに命を狙われることになった葛見を葬花少女が護衛し、レギオンを倒そうという。非常に分かりやすい物語の筋道。だというのに、読んでいると違和感を覚え始める…何か歯車が合っていない。ごく小さな違和感は、物語中盤から大きな謎となって姿を現し、解決へと向かっていく。

つまりこの作品が本当に面白くなるのは、中盤から。ある「真実」を主人公である葛見が、読者が知った瞬間から始まる。全てがひっくり返ってしまう展開。バカなくらい正義感に突き動かされる葛見は、愛する幼馴染の春野のため、命を賭けて無謀な戦いに身を投じることになる。真実を知ってしまったら、もう今までの自分ではいられない。自分と同じように、バカなくらい真っ直ぐ生きる幼馴染・春野を想い続けながら戦う葛見の「男っぷり」に唸って頂きたい。