飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「86 ―エイティシックス― ラン・スルー・ザ・バトルフロント」

86―エイティシックス―Ep.2 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―〈上〉 (電撃文庫)

〈あらすじ〉
共和国の指揮官・レーナとの非業の別れの後、隣国ギアーデ連邦へとたどり着いたシンたち“エイティシックス”の面々は保護され、一時の平穏を得る。だが―彼らは戦場に戻ることを選んだ。連邦軍に志願し、再び地獄の最前線へと立った彼らは、シンの“能力”によって予見された“レギオン”の大攻勢に向けて戦い続ける。そしてその傍らには、彼らよりさらに若い、年端もいかぬ少女であり、新たな仲間である「フレデリカ・ローゼンフォルト」の姿もあった。彼らはなぜ戦うのか。そして迫りくる“レギオン”の脅威を退ける術とは―?第23回電撃小説大賞“大賞”受賞作第2弾!シンとレーナの別れから、奇跡の邂逅へと至るまでの物語を描く“ギアーデ連邦編”前編!“死神は、居るべき場所へと呼ばれる”

86―エイティシックス―Ep.3 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―〈下〉 (電撃文庫)

〈あらすじ〉
敵“レギオン”の電磁加速砲による数百キロ彼方からの攻撃は、シンのいたギアーデ連邦軍の前線に壊滅的被害を与え、レーナが残るサンマグノリア共和国の最終防衛線を吹き飛ばした。進退極まったギアーデ連邦軍は、1つの結論を出す。それはシンたち「エイティシックス」の面々を“槍の穂先”として、電磁加速砲搭載型“レギオン”の懐に―敵陣のド真ん中に突撃させるという、もはや作戦とは言えぬ作戦だった。だがその渦中にあって、シンは深い苦しみの中にあった。「兄」を倒し、共和国からも解放されたはず。それなのに。待望のEp.3“ギアーデ連邦編”後編。なぜ戦う、“死神”は。何のために。誰のために。

あけましておめでとございます。
今年もよろしくお願いいたします。

本年一発目の感想記事になります。と、言っても新年明けて随分経ちますが。例年は新年初はイラストレーター系の記事を書いていたのだけど、どうも需要の問題で今年は書きませんでした。モチベーションって大切ですよね。(ブクマ数を見ながら)

さて感想です。
本作は上下巻であったため、まとめて書きます。内容としては1巻終盤でババっと描かれていた流れを上下巻構成で丁寧に描き直しています。単巻作品だと思っていたので、続きが出ることに驚いた記憶が。内容を見るに「なるほど」と思い、これなら続きも書けそうだと。構想も結構あるとのこと(?)なので、どんどん出して貰いたい。むしろ次からが本番のような。

戦闘が濃厚だなあ。今回読むにあたって1巻読み直したのだけど、上手いんですよねえ。

「先生とそのお布団」感想

先生とそのお布団 (ガガガ文庫)

〈あらすじ〉
これは石川布団という作家と、人語を解す「先生」と呼ばれる不思議な猫とがつむぎ合う苦悩と歓喜の日々。企画のボツ、原稿へのダメ出し、打ち切り、他社への持ち込みetc…。布団はさまざまな挫折と障害に直面しながら、それでも小説を書き続ける。ときに読者に励まされ、ときに仲間に叱咤され、素直に、愚直に、丁寧に、ときにくじけて「先生」に優しく厳しく叱咤激励されながら―。売れないライトノベル作家と「先生」とが紡ぎ合う、己が望む「何か」にまだ辿り着かぬ人たちへのエール。優しく、そして暖かな執筆譚。

個人的に以外だったのだけど、石川さんはガガガ文庫で書く(出版)するのはこれが初なんですねえ。ガガガっぽいイメージはある。なんとういか勝手なイメージですが。伝わります?

売れないラノベ作家・石川布団。作品が打ち切りになったり、企画が通らなかったりと思うようにいかない作家生活。そんな日々を支えてくれるのは、人語を話す年寄り猫の「先生」だった。先生から適切なアドバイスを受けながら、布団は苦難の作家生活を歩む。

ラノベ作家を神格化していた時期がありましたが。SNSの普及によってラノベ作家の生活が可視化されるようになって、苦労が絶えないことを知り、彼らは決して神ではなく人であることを知った訳です。

これは石川博品さんの私小説なんですかね? あまりそこは意識せずに感想を……辛い。読んでて面白いんだけど、辛かった。作家と呼ばれる人の大半が「売れない」道を歩んでいるのは理解しているけど、こう読まされると本当に辛いとしか。夢も希望もない……はずなのに、布団の挫けない心に感動する。作家さんに必要なのは書き続けること、挫けない精神なんでしょう。猫の先生も言ってますし。

布団の描く物語には強固なファンがいるんだろうなあ、と。そんなしっかりとした作品作りの姿勢にこれまた感動したり。いや、でも売れなさそうだ。(苦笑) 評価されるけど売れないの典型的な作家さんだよ。あくまでも作品の話です。なんだかんだでオチも好きですし、とてもまとまってる作品だった。

「セックス・ファンタジー」感想

セックス・ファンタジー (Novel 0)

〈あらすじ〉
「異性を誘惑し意のままに操る能力」を持つ度を超した女好きの青年シードは、世界に「愛」=「性」を伝えることを生きがいに旅を続けていた。そんな彼の次の目標は、魔神の力を宿した衣、魔衣をまとう美少女――魔衣姫。ある国の国王代理を務める姫君アリーシャだった。彼女とHするため、国内に潜入したシードだったが、なんと姫の方から「わたしを堕として欲しい」と持ちかけられ? 自由奔放な男と千差万別な美少女たちが絡まり合うファンタジーエロコメ開演!

ちょっと男子ー! みんな前屈みなんだけど!
ええ。そうですね。タイトルを聞いただけで全思春期の男子は前屈みになってしまいます。そんな力がこのタイトルにはある。何なら辞典で調べて前屈みになるまである。

魔神の力を宿し、一騎当千、戦場を駆ける美少女たち。彼女たちに対抗できるのは、ひとりのエッチが大好きな青年であった。彼の名はシード。自他共に認めるクズ男であるシードが持つのは異性を魅了する力。その力を駆使し、次々と乙女たちに愛を注ぎ込んで行く。

あらすじを読んだ時、「まさかこんな話じゃないだろうなあ?」と思っていたのだけど、思っていたとおりの話だった。端的にいうとセックスだった。もうセックスしかしてない。いや、「タイトル読めば分かるだろ?」と思うかもしれないが、結構な確率でタイトル詐欺だったりするじゃないですか? 特にセックスは。なのにセックスしかしてないんですよ、しかもコミカルにセックスしてて驚くわ。初めて読むノベルゼロ作品がこれで良いのかと思うくらいセックスしてる。

感想がセックスしかない。セックスって言いたいためにこの作品があるみたいな。それぐらいセックスなんですよ。全童貞を敵に回すほどのセックス無双に潔さすらある。捻りとかないのでメチャクチャ読みやすいセックスだった。僕もうセックスしか言ってない。だってセックスなんだもん。セックスセックス。おしまい。

「火星の人」感想

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

〈あらすじ〉
画「オデッセイ」原作。 有人火星探査が開始されて3度目のミッションは、猛烈な砂嵐によりわずか6日目にして中止を余儀なくされた。だが、不運はそれだけで終わらない。火星を離脱する寸前、折れたアンテナがクルーのマーク・ワトニーを直撃、彼は砂嵐のなかへと姿を消した。ところが――。奇跡的にマークは生きていた!? 不毛の惑星に一人残された彼は限られた食料・物資、自らの技術・知識を駆使して生き延びていく。

「独り」という言葉を聞くと、思い出すのが大学生の時。一人暮らしをしていたのだけど、PS2ディスガイア」にハマって3日ほど引きこもり生活を送ったんだですよ。食料が尽きたのでコンビニに弁当を買いに行き、レジに出した際、店員さんの「温めますか?」の問いかけに声が出ず何も言えなかったというエピソード。人間、喋らずにいると咄嗟に声が出ないことを知りました。いや、主人公のワトニー君の「独り」はそんなちっちゃなもんじゃありませんが。

巨大な火星。3度目の調査ミッションのため、火星に降り立ったワトニーたち6人であったが、僅か六日で天候の悪化により退避をすることになる。その際の事故でワトニーは砂嵐に飲み込まれ、そして仲間たちは火星を飛び立ってしまう。奇跡的に生き延びたワトニーであったが、火星でひとりぼっち。火星調査のために残された資材を駆使し、ワトニーは独り生き延びて帰還する道を探り始める。

少し前に「オデッセイ」というタイトルで映画化された本作。ちなみに僕はCMで予告は見ましたが、本編は見てはいないので「どんな結末が待っているのか?」ドキドキしながら読みました。
面白かった。ハヤカワ文庫=SFということで、ワトニーに襲いかかる数々の苦難をしっかりと科学的に攻略していく。
(正直、全く意味が訳分からない描写もあった。なんかとにかく凄いことしてるんすよ)
そしてこのワトニーくん。圧倒的な孤独の中、何の助けもなしに頭を回転させて生き延びようとする「心の強さ」が強烈。僕なら数秒で気がどうかしてしまう。ワトニーが生きていることに気づいた地球側の人々が彼の心を心配したが、結構お気楽な感じでどんだけメンタル強いんだよと。

この作品を読んでいると思うのが「真の天才は自分を天才だとは思っていない」ということ。ワトニーは次々解決法をはじき出すが、それが普通のことのように感じている節がある。それは作者もそうで、いやそんな描写、凡人の僕には何を意味するかサッパリ分からないので結論を教えて下さい、という感じになります。そして驚かされるパターン。

結末は知ったけど、視覚化=映画化するとどういう描写になるのか。ものすごい気になるので映像作品も見てみます。

「処刑タロット」感想

処刑タロット (電撃文庫)

〈あらすじ〉
「僕はゲームの天才を探していました」
クリア率98%のVR脱出ゲームを、ただひとり“真のバッドエンド”で迎えた高校生の鳴海恭平。その腕前をゲームの製作者である片桐渚に見込まれた鳴海は、死のリスクがあるという裏の脱出ゲーム「サドンデス」に招待される。
鳴海はある人物を探し続けていた――デスゲームに身を晒し続ける“死にたがり”のクラスメイト・梨々花。しかしゲームの中で再会を果たした彼女は、「処刑タロット」と呼ばれる禍々しいカードの呪いに囚われていた! 梨々花を救うためには、危険なゲームをクリアし、すべての「処刑タロット」を集めるしかない。だが、そのゲームには、他にも様々な事情でカードを手にした少女たちが参加していて……!?

土橋作品、最近読んでないなあ……と思って最後のページにある著作一覧を見たら結構読んでいた。ちょっと驚いた。僕、なかなかやるじゃないですか。(自画自賛?)

土橋さんといったら植田亮さんとのコンビという印象が強いので表紙を見て購入を決定。あらすじを読むと、「土橋さんといったらこれでしょ!」なデスゲームを題材とした作品でした。土橋作品主人公はクールなのかアホの子なのか分からなくなる不思議な創造をするよね。この作品の主人公・鳴海もちょいちょい意味分からない言動してて性格を読みきれねえ。(笑)

デスゲームといってもひとつのゲームを掘る下げていくのではなく、いくつものゲームを渡り歩いていく感じ。なのでゲームが移るごとに内容を覚えないといけないのが結構しんどい。ひとつのゲームに没頭させてくれた方が楽しかったかな。あと真のヒロイン(?)渚が可愛くて辛かった。ほんと報われてほしいキャラです。

「ウォーター&ビスケットのテーマ1 コンビニを巡る戦争」感想

ウォーター&ビスケットのテーマ1 コンビニを巡る戦争 (角川スニーカー文庫)

〈あらすじ〉
8月をループする街・カミサキ。この街に迷い込んだ人は特殊能力を与えられ、限られた食糧を巡る戦争に身を投じる――だが《臆病者》の高校生・香屋と幼馴染み・秋穂は、戦闘に全く役立たない能力を選んで……?

気がついたら前回の更新から2ヶ月以上……最低でも1ヶ月に1回は更新したいと思っていたあの時の想いはどこにいった? 時の速度が速すぎたんだ……!(ぉぃ)

高校生の香屋とその幼馴染の秋穂はあるゲームに招かれる。8月がループする街『架見崎』で行われているのは異能力を与えられ、人を脅しあい・殺し合いながら繰り広げられる陣取り合戦。『架見崎』全土を支配するとどんな願いでも叶えてくれるという不気味な運営サイド……香屋と秋穂は戦闘力皆無の異能を選択し、ゲームに挑む。

サクラダリセット」のコンビ、と聞いて重たい話なのかな、と妙な先入観を持って読み始めたけれど。いやいや、400ページ弱の分量ではあるが特に抵抗なく楽しく読めました。

この作品の面白いところは数多く存在するゲームのルール。でも覚えにくいルールではなく、そのルールのひとつひとつが伏線になってデスゲームの緊張感を高めてくれる。そしてその駆け引きをする香屋の性格。これを臆病というのか、慎重というのか。とにかくいろんなケースの想定をして動いていることが分かる。

ゲーム全体を俯瞰するように思考を巡らせる香屋に、その思考を完全に理解して動く秋穂の奇妙な幼馴染の関係がまた面白い。恋を意識する関係、ではなくもっと別の心が繋がっている関係……強い信頼を感じさせる。そんな幼馴染ズに囲むこれまた癖の強いキャラクターたちがどう深く関わっていき、生き残っていくのかが見所だなあ。