飼い犬にかまれ続けて

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「そして不滅の神域封剣(レグナーレ) 」感想

そして不滅の神域封剣(レグナーレ) (MF文庫J)

〈あらすじ〉
過去の事故が原因で特殊な身体能力を得てしまった高校生、如月武琉は、窮屈ながらも変わらずに現代社会を生きていた。けれどある日、自宅の倉で謎の光に包まれ、気がつくとそこは、魔力を増幅させるための装置としての"剣"が世の中を支配している異世界だった……。咲耶と名乗る黒髪黒目の美少女は武琉に告げる。「ここは高度一万五千メートルに浮かぶ、世界唯一の空中都市―――神霊浮遊都市(エーテル・フロート)」各国のエリートが集められた学園『封剣学園』を舞台に繰り広げられる学園バトル無双幻想曲、始動(イニシエート)!

デビュー作の『おもらしラノベ』とは180度転換、正統派の異世界召喚モノを仕上てきたなあ。突拍子もない設定をもとにした物語だけでなく、王道も描けるという意味でも楽しめる作品だった。

とある事件をキッカケに超人的な力を宿すことになった如月武琉だが、幼き日に両親を亡くし、また親愛する祖父も亡くなり、何をやっても上手くいってしまう今の生活に生きる意味を見失っていた。そんな彼を突如光が包んだかと思うと、次の瞬間、見知らぬ世界と…可愛い女の子が目の前にいた。意図せず武琉を召喚してしまった女の子、咲耶は異世界の住人。その世界では七つの『神域封剣』と、そのレプリカである『偽剣』を使うことで人知を超える力を発揮することができる。七つの国よって創造された空中に浮かぶ都市『神霊浮遊都市』…『剣』の力を操る者を育成する『封剣学園』の生徒である咲耶は、滅亡寸前のヤマトの国を復興させるため、鞘だけしかない『神域封剣』を腰に下げ、孤軍奮闘していた。誰も待っていない元の世界と退屈な日常から解放された武琉は、己の力を行使し、咲耶と共に戦い始める。

清々しいまでの「主人公最強!」という設定。正直なところ、ここ最近の流れでその設定に辟易していたものがあったのだが、その主人公に「熱い想い」が加わると話は変わってくる。ウジウジ悩まず、悲願を達成したい咲耶のためにただひたすら真っ直ぐ戦おうとする武琉の姿勢に心が熱くなるのを感じる。また滅亡寸前の自分の国を救うために行動する咲耶は、周囲に強がった態度を取るものの、頼り甲斐のある武琉にはしっかり助けを求めるヒロイン力もある。あまり突っ張りすぎてしまうと助けるに助けられなくなるから。

設定にこれといった難しい設定はない。『剣』や水面下では対立する国家などの世界観はそれほど頭を回さずとも覚えられる。序盤、武琉を異世界に引っ張り込む流れがちょっと唐突だったのと、その後の展開はもっと丁寧に描いてもいいかな、と思ったりもしたが、後半の武琉と咲耶の強固な繋がりを見てしまえば、そんな不満も吹っ飛んだ。強いていうなら展開が後半になるまで大きく動かない「遅さ」が難点だったかなあ。信頼できる仲間も出来て、次回以降のキャラクターの動きに期待。