飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「天使の3P!」感想

天使の3P! (電撃文庫 あ 28-11)

天使の3P! (電撃文庫 あ 28-11)

〈あらすじ〉
過去のトラウマから不登校気味の貫井響は、密かに歌唱ソフトで曲を制作するのが趣味だった。そんな彼にメールしてきたのは、小学五年生の少女たち──!?
「わ、私。大好きなんです。やさしくて」泣き虫っ子な五島潤(通称:潤たん)。
「よくもうちの潤をキズモノにしたわね」強気そうな紅葉谷希美(通称:ぞみ)。
「はむ。わたしたち、もう高学年だよ?」はむはむしている金城そら(通称:くー)。
子供の頃から一緒に育った三人が、想い出作りと感謝のために、一生懸命奏でるロリ&ポップなシンフォニー!

ーー見えたぞ、逮捕〈エンディング〉が。
違います。僕はロリコンラノベが読みたいのではなくバンドラノベが読みたかっただけなんです!
言い訳はここまでにして、はい、揺るぎない蒼山サグさんの作品でした。期待されている内容が分かっていて、ロリコンに…じゃなくて読者にしっかり応えてくれているのを感じた。
今回の題材はバンド。ただのロリコン御用達ラノベではありません。引きこもりの主人公・貫井響の作る音楽に惹かれた小学五年生の『ヒロイン』の潤、それに希美にそら。響が楽曲を提供し三人の暮らす教会でライブを開くため活動する真面目なバンドパートもあれば、小学女子とキャッキャウフフと戯れる第三者が見れば警察を呼ばれること間違いなしのロリコンパートの二つがバランス良く配置されて展開されるので、飽きることがなく読み進められる。
潤、希美、そら、加えて響の妹であるくるみと『ヒロイン』たちの属性は手堅く構成されて隙がない。蒼山サグ恐るべし。特に妹のくるみは口では兄を罵るものの、兄を心配したり、一緒にお風呂に入って甘えたり、三人の同級生たちに嫉妬したりともう可愛さ爆発。妹ととして出来すぎてます。
キャラクター小説としてだけではなく、引きこもっていた響と、三人の輪だけで過ごしていた潤たちが、音楽活動を通してその閉じた世界から羽ばたいていく様が描かれているテーマもあり、いや良く出来てるな、と。ほんとただのロリコンラノベではないんですよ!(強調)
しかし本来ならばメインヒロインのポジションであるはずの桜花が噛ませ犬どころか攻略ルートにすらないように思えるのは蒼山サグ作品だからにちがいない。