飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「ひきこもりパンデモニウム」感想

ひきこもりパンデモニウム (MF文庫J)

〈あらすじ〉
史上最強の退魔師・日高見久遠は引きこもりである。肝心の悪魔がやってこないため周囲から家業をバカにされ、久遠が力を発揮するのは自宅警備のみ。兄の春太は妹を学校に行かせようと奮闘するが、久遠の引きこもりスキルは磨きがかかるばかり。そんなある日、ついに念願(?)の悪魔軍が襲来。だが、最強の悪魔王サタンすら久遠の相手ではなく、悪魔軍はあっさりと降伏。しかも成り行きでサタンが地獄に帰れなくなり、退魔師兄妹と悪魔王の奇妙な同居生活が始まっってしまった!?――

いやーツボに入って久しぶりに笑った。
『ハートフルギャグラブコメ』の看板に偽りは無く、心温まるおかしな日常を提供してくれました、とても気持ちの良い作品。

退魔師の家系である日高見家。その養子として育てられた春太であるが、高校二年生になった今まで肝心の悪魔を見たことがない。義妹の久遠は最強の力を持つ退魔師でありながら、家業をバカにされたことで引きこもりになってしまった。何とか家から久遠を出そうと試みるも失敗の連続…そんなある日、ついに地獄から悪魔が出現! 世界を救う活躍の場を得たことに喜ぶ不謹慎な日高見兄妹であったが、悪魔最強の魔王サタンを久遠はあっさり撃破。退魔師の力を世間に知らしめる前に戦いは終わってしまった。いつも通りの日常が再び戻ってくる…そう思って肩を落としていた久遠であったは、降伏したサタンがちょっと事故によって地球に取り残されてしまったことから、日高見兄妹と魔王の同居生活が始まる。

巧みな会話回し!
日常系におけるキャラクター同士の掛け合いは感覚的な物言いで申し訳ないのだけど、読者を笑わせようとして「滑る」ことが多い。でもこの作品は違う。地の文よりも目立つ日高見兄妹の会話はピタリと息が合い、ボケツッコミを互いに変えながら物語を流れるように進行させる。この兄妹の信頼関係と愛を強く感じられる。「イジメによる引きこもり」という設定にも関わらず、物語が沈まずに明るく展開するのはこの二人の性格があってこそ。

更に物語が進行すると魔王サタンを中心に悪魔の軍勢(?)も加わり、おバカな会話を展開する。日高見兄妹のペースにハマってアホにみたいにツッコミを入れる魔王サタンの可愛らしいこと可愛らしいこと。

基本的にはコメディ要素満載で進んで行くのだが、物語中に日高見家の過去が散りばめられそれが後半に集まり盛り場を作る。唐突な展開に最初は戸惑うものの、これまでコメディ要素で誤魔化していた「都合の良い展開」に対する説明に繋がり、最後は上手く纏めきっている。ひとつの物語として綺麗仕上がっているのが素晴らしいね!
素直に彼等の日常をこの先も読みたいと思える作品でした。ほんと、面白い!