飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「グロリアスハーツ」感想

グロリアスハーツ (富士見ファンタジア文庫)

グロリアスハーツ (富士見ファンタジア文庫)


実に『富士見ファンタジア文庫』の名に相応しい物語でした。
ありがとう!そしてありがとう!

シローフォノ軍の研究機関クレイドルで生み出される異能を持つ生命兵器『贋人』〈ギニヨル〉
冷気を操る贋人の少女ユズカは、主人公・アルトゥールと共に宅配業を営みながら、ある目的のため旅をしていた。『欠陥品』の贋人であるユズカと、ただの人間でありながら『炎を纏う剣』を呼び出して使うことの出来るアルトゥール。幼き日に出逢い兄妹のように育った二人は、普通の人間に戻る方法を知っている可能性を持つ贋人の研究者ディニタを追う。しかし旅は順調には進まず、立ち寄った街で『贋人狩り』事件に巻き込まれてしまう。ユズカとアルトゥールはディニタを捜し出し、人に戻ることが出来るのか。

アルトゥールとユズカ。共に育ち、悲しい過去を共有する二人が、互いを想い合う。
これは本当に『始まり』の物語。二人の生きる世界と背負っている想い。それを知って感じて。この先待ち受けている物語に期待が高まる。
大きな盛り上がりを魅せた訳でもない。今回の話に限れば綺麗に纏まっているがとても小さな物語だった。それでもこれだけ期待してしまうのは兄のように振る舞うアルトゥールという少年と、そんな彼に懸想しているのが誰の目にも明らかなユズカという少女が好きだから。そして心の中に染み入るこのファンタジー世界も好き。人によっては物足りなさを感じるかも知れないが、それはまだ舞台が整っていないから。間違いのない物語を作り上げて貰えるという確信があるので、この作品を応援していきたい。