飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「バニッシュ・ドロップス 家出中アイドルをフォローしますか?」感想

バニッシュ・ドロップス―家出中アイドルをフォローしますか? (電撃文庫)

バニッシュ・ドロップス―家出中アイドルをフォローしますか? (電撃文庫)


ここ最近おかゆさんは新作ラッシュだけど、どれも面白いよ。
展開も良く、ひとつの作品として綺麗に纏まっていた。

温和な性格でちょっと天然の入っている小井戸駆は高校生活初の夏休みを満喫するため、意気揚々と街へと繰り出す。幸運にも大好きなゲームの先行発売イベント列を見つけ並ぶことのできた駆であったが、列に割り込んでゲームを転売しようとする人たちに注意をしたことから彼等に絡まれてしまい絶体絶命のピンチに陥る。その危機を救ってくれたのが駆と同い年の美少年・伊豆島レオだった。転売屋を一蹴したレオと、大好きなゲームを通じてあっという間に意気投合した駆は夏休みの間この街にいるという彼をひとりで暮らすアパートに誘う。が、その提案に何故か動揺するレオ。それもそのはず、レオの正体は瑞星リサという『国民的美少女アイドル』であり、現在とある事情から家出中の身だからである。レオを完全に男だと思い、友情を感じている駆。そんな彼との友情を失いたくないため、男を演じ続けるリサ。二人の『友情』は一体どこに向かっていくのか…。

タイトルを見て「ツイッター絡み?」と思ってしまったのは僕だけはないはず。最後まで読み、なるほどタイトルの『フォロー』はそういう意味かと納得。
家出中のアイドルを匿っているとは露知らず、男装女子のレオ(=リサ)と友情を育みながらアパートで仲良く暮らす駆の天然さといったら、ある意味罪ですな。駆とレオの両者の視点で描かれているため、友人が出来て喜ぶ駆けるの好意からの行動が、女性であることを隠したいレオのピンチを招いてドキドキさせるところが読者から見て非常に良いラブコメに仕上がっている。駆との友情が深まるにつれて、彼との友情を裏切っているのではないかと悩み出すレオ。しかしこの展開のままだと悩むのはレオだけになってしまうところだが、駆もまたレオのマネージャーから『彼』が才能ある役者であることを聞かされ芸能界に復帰するよう言って欲しいと頼まれることで、駆もまた悩み始めるシリアスな展開に移行。互いが互いのことを想い、悩む姿が心打つ。特に駆に対して友情とは違う想いを抱き始めているレオの揺れ動く心が愛おしい。すれ違い駆けた二人の想いが再び重なって、しっかりとしたラストを迎えられたので個人的には満足。続きを書けそうではあるけど、二人の夏休みは綺麗にここで終わるのもいいかと。

しかし灰塚さんの噛ませ犬っぷりときたら。途中「灰塚さん、もしかしてレオに惚れた?」という読み違いをしていたのは内緒です。