飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「ミニッツ 一分間の絶対時間」感想

ミニッツ―一分間の絶対時間 (電撃文庫)

ミニッツ―一分間の絶対時間 (電撃文庫)


第18回電撃小説大賞『選考委員激励賞』作品。
今年の電撃新人作品で一番好きな作品は『ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー』だけど、一番面白いのはこの『ミニッツ』でした。

穂尾付学園高校に入学して1ヶ月ばかりの主人公・相上櫻にはある目標がある。それは一年生の内に全生徒のトップである生徒会長に登り詰めること。成績優秀、容姿端麗、更に人当たりも良いクラス委員の櫻は生徒・教師からも受けが良く、生徒会長に至る地盤作りを着実に築いていた。そして野望達成のためもっとも頼りになるのが櫻の能力『絶対時間』…相手の心を一分間だけ覗き見る力だ。本性を隠し、櫻は『絶対時間』を利用して人の心の隙をついていく。しかし順調に見えた櫻の覇道であるが、ちょっとした油断からとある人物に弱みを握られてしまう。その相手とは生徒会副会長である琴宮遙。負けず嫌いの櫻は弱味を握られたままではマズイと、不登校生徒である遙の妹・彼方が彼女の弱味になると睨み、彼方の学園復帰を手助けするという口実で遙に近づこうとする。が、遙は一筋縄ではいかず櫻を欠片も信用しない彼女は、櫻を退けるためある『心理ゲーム』を提案する。

まず最初に一言。帯の大河内一楼は読者への先制攻撃だと思います!(笑)
一年生で生徒会長になるべく根回しを欠かさない『キレ者』の櫻であったが、遙と出逢ったことから次々現れる女性たちに振り回されては動揺する姿が実に楽しい。人の心を一分間だけ読める『絶対時間』を上手く利用して状況を好転されたかと思うと、ちょっとしたことからピンチになる櫻の上げ下げの激しいこと激しいこと。遙と対決した『心理ゲーム』…あの心読み合いに勝った際の櫻はあんなに格好良かったのに。『ミニッツ』は心理戦も面白いがそれ以上に櫻のヘタレっぷりを楽しむ物語だと思ってる。が、ヘタレた瞬間…櫻本人が失敗と感じる感情を爆発させる場面では、いつも心を覆い隠している彼から本音が聞け、櫻の行動理念を知ることができる。そこまできてようやく「なんで生徒会長なんて目指すんだろうか?」という疑問が解消される。また櫻以外にも真っ直ぐ心を見せない者たちがいて、琴宮姉妹…特に彼方の依存と執着には背筋に冷たいモノが走るよ。姉妹の依存する姿を『百合姉妹』と称した櫻を評価したいです。嘘と本音を出しながら、最後にはしっかり絆を築いているところが憎い。最初はあんなに腹の立った櫻が、好きになっている自分がいる。ほんと、この作品は櫻あっての物語ですわ。あとアザミ様ね(笑)