飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「反抗期の妹を魔王の力で支配してみた。」感想

反抗期の妹を魔王の力で支配してみた。 (GA文庫)

反抗期の妹を魔王の力で支配してみた。 (GA文庫)


日日日さん初の異世界ファンタジー作品。
異世界ファンタジー好きとしては飛び付かざるおえない…内容も非常に良かった!

勇者が魔王を封印し、戦争が終結してから15年。平和になったものの、魔王に荷担した種族が差別されたり、魔王討伐に活躍した『魔の力』を使う者たちが危険視されたりする世界。街の片隅の居酒屋でバイトをしながら女の尻を追い回す生活をしているチャラ男ことクダラもまた、戦後差別される血筋のため隠しているのだが…ハイテンションな『反抗期』の妹ミカリンがバイト先に乱入し身分が明かされクビになる始末。『魔王の子孫』である兄クダラ。『勇者の娘』である妹ミカリン。血の繋がりがあるのかどうかも分からない兄妹。言うことを聞かない妹に腹を立てるクダラは、とある魔法使いの力によって覚醒した魔王のちから『絶対命令権』を行使し支配しようとするのだが、これが思わぬ結果を生み出す。そして『絶対命令権』を手に入れた代償として、魔法使いが学園長を務める冒険者養成学校で臨時講師をやることに。しかし受け持つ生徒はミカリンを始め、問題児ばかり。果たしてクダラは、ミカリンを含めた四人の問題児を更正させ、退学の危機から救うことができるのか!?

表紙と口絵だけだと「異世界を舞台にしたラブコメ」のように見えてしまう不思議!…ですが、中身は日日日さんらしくしっかりどろっと黒いモノが混ざっている物語でした。
『魔王の子孫』として産まれたクダラだが、時代と生い立ちのせいですっかりダメ人間(?)になってしまった兄を、『勇者の娘』として育て上げられた妹ミカリンが見かね、正しい生活に導こうとするも暴走しているようにしか見えない。どうにも噛み合わない兄妹…かと思えば、魔王のちから『絶対命令権』で妹を支配したクダラが、ミカリンの真の想いを知ってからの「可愛い妹とのひととき」の描写が甘すぎて悶える。力で支配した結果、ミカリンの口から想いと素直な態度を引き出せたとクダラが思い込む一方で、実は魔法防御アイテムを身につけていたミカリンには効いていなかったと。素で接すればこんなに距離の近い二人なのになあ。『絶対命令権』が作り出す兄妹のダダ甘空間を今後も出していって欲しい。

冒険者養成学校でのクダラ先生としてのパートでは、ミカリンたち四人の問題児のレベル上げがいかにもなRPG的なファンタジー。ダークエルフのチョコラタ、獣娘のクンクン、忍者娘のテツローとミカリンを含めて個性的なヒロインたちがわいわい騒いでいる姿が可愛いのなんの。彼女たちと接している内にクダラの心も成長し、生徒たちのためしっかり活躍している様が主人公らしくて良い。ラストに登場した『勇者』の不気味さの表現が、日日日さんらしくて黒い展開にわくわくしてしまう。