飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「SatanDay Night」感想

SatanDay Night (KCG文庫)

SatanDay Night (KCG文庫)

〈あらすじ〉
世の中から嫌われて育った魔導師クロンは、世界征服を目 的として異世界から魔王を召喚した。
しかしそこに現れたのは、一糸纏わぬ姿の美少女セイ・アラキスだった。
少女は世界征服をするどころか「正義の味方になろう」と言いだして……。

なによりもまず言いたいのは、この読みやすさ。設定に難しところがなく、冒頭の主人公の恨みごとから見事最後まで読者を引き連れることに成功している。ライトな語り口で内容も方向性が定まっているので面白い。

差別が横行する不条理なファンタジー世界が舞台。祖父のとんでもないテロ行為によって無関係な自分まで人々に忌み嫌われ、お尋ね者になってしまった主人公の魔導師クロン。彼は世界を呪い、世界を滅ぼすため禁忌である「魔王召喚」を果たすことになる…のだが、出現したのは銀髪の美少女。セイと名乗る彼女はクロンの願いを拒否し、逆にクロンと共に穢れた世界を救う「正義の味方」になると言い出す。

魔王らしからぬ魔王セイ。鬱屈とした日々を送っていたクロンに光を与えることになる異世界人の彼女の考えは非常に前向きだ。世界を滅ぼすのではなく、救ってヒーローになれば世界征服だしみんなハッピーになれる。そんな考え方に、次第に同調していくクロンも根は悪い奴ではない、どころか良い奴なのだ。セイに触発され、お節介を焼くクロンはどうにも運に見放されているのか失敗続き。が、その頑張りをしっかりセイは見ていて、「魔王ここにあり」という実力を行使する。その過程で心根の真っ直ぐな者たちがクロンの元に集まり、孤独とは縁遠いものになっていく。

またクロンはセイ頼みで生きる訳ではない。しっかりと最後には自分の実力を見せる見せ場も用意されている。しかしそこで頑張って最後まで決められないのがクロンらしいというか、いやいや独りで戦うのは止めただけ。セイと力を合わせて悪を屠る様はとても気分が良い。

この物語は心地よいなあ。出来れば続きを読みたいところだけど。KCG文庫はシリーズ展開するのかも良く分かってない…。