飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「ラグナロク:Re 1.月下に吼える獣」感想

ラグナロク:Re 1.月下に吼える獣 (オーバーラップ文庫)

〈あらすじ〉
人ならざる怪物“闇の種族”が跋扈する世界。私とともに旅をするリロイ・シュヴァルツァーは、傭兵として各地を放浪していた。そんな相棒にある時舞い込んできた依頼。一見容易な依頼のように思えたそれは、リロイを亡き者にしようとするための罠であった。さまざまな暗殺者、エージェント、そして“闇の種族”が相棒に襲いかかり、私もその面倒な災難に巻き込まれることになる。―そういえば自己紹介がまだだったな。私の名はラグナロク。リロイが携えているひと振りの剣、それが私だ。時代を超えて再構築された、バトルファンタジーの金字塔。第1幕。

止まっていた時計が……ついに動き始めた!
ヤスケンラグナロクのリブート版を「なろう」で連載始めた時は驚いたものですが。しかしどうにもディズプレイ越しに文章を読むのが苦手だったので、文庫化は嬉しい。ありがとうオーバーラップ文庫!でも再販するのはガガガ文庫かな、と思ってたのは内緒です。ほら、某暗黒ライトノベルも再販した前例があるから。(震え声)

元はスニーカー文庫で発売されていて、結構な巻数が出ていたシリーズです。当時高校一年生くらいだったか、テレビCMが流れていたのをキッカケに購入。無茶苦茶強くて無茶苦茶な言動する黒ずくめの傭兵・リロイ。そして1000年前、超古代文明が作り出されたオーバーテクノロジーの「喋る剣」ことリロイの剣=ラグナロク。本作はラグナロクの視点を通し、魔族・魔物的立ち位置の「闇の種族」(ダークワン)や、人智を超える強さと狂人としか思えない思考を振りかざす人間(なのか本当に?)たちと対決していく。

とにかく常識というものが通用しないキャラクターが次々現れる。もちろん、リロイとラグナロクも園中に含まれている。この第1巻は一人と一本のコンビが、とある街を支配する巨悪の組織に命を狙われたことから大量の死人を出す殺し合いに発展する。巨大な陰謀が渦巻いているのだけど、リロイの考えからすると「ケンカを売った・買った」というどうにもレベルの低い話になるところが凄いところ。そしてある意味筋は通っている。

1巻はスニーカー文庫の新人賞作品だったため、まあ一冊で終わっても不思議ではない作りになっていたが、リブート版として蘇った本作は後に登場し物語に深く関与するキャラクターがこの時点で参戦。この時点で出ていても問題ないどころか、この先の展開を考えると出張ってきた方が良いキャラクターばかりのため、かなり読みやすくなっていると僕は感じた。

この「ラグナロク」シリーズの魅力は、物語以上に、何度も言っている通り狂人としか思えない思考をしているキャラクターが次々投入されるところ。スニーカー版は本編の他、ラグナロク以外の視点でリロイの過去を始め、様々なキャラクターに焦点を当てた外伝作品もあり、そちらからも本編の方に参戦してくる。キャラクターが多すぎるのだが、個性豊かすぎて忘れることがないのは、ある種恐ろしいキャラクターの作り込みだと思う。リブート版では本編と外伝の境界線をどう扱うのか。可能な限り作品を丁寧に扱って進めて欲しい。ここまで待ったのだから、どこまでも待ちます。

あと僕のスニーカー文庫版の1巻を借りパクした高校生の同級生くん。そろそろ返してくださいお願いします比較もできない。(泣)

「誰が為にケモノは生きたいといった」感想

誰が為にケモノは生きたいといった (ファンタジア文庫)

〈あらすじ〉
「目のやり場に困ってるんだよ。それとも誘ってるのか?」上官殺しの罪で現世には二度と戻れないという絶対流刑の地『棄界』に送られた魔術猟兵のイオリ・ウィンウッドは、湖で溺れかけていたところを少女に救われる。獣の耳と尻尾を生やし身の丈ほどの大剣を持つ全裸の少女はタビタと名乗り、匂いを嗅いだりとイオリに興味津々で…。そして父親の仇であるイオリを殺すため自ら『棄界』に来た女騎士ユーフェミアも巻き込んで、タビタの地竜狩りを手伝うことになるのだが…。「イオリが行く所、私、行く」生きなければいけない呪いを背負った少年と、ケモノの少女が紡ぐサバイバルファンタジー!

感想ブログよ、私は帰ってきたッ!
はい。前回の更新からだいぶ空きました。でもまだ1ヶ月は経過していないのでセフセフ。全てが「モンスターハンター・ワールド」がいけないのです。発売から3ヶ月が経とうとしていますが、アクション性が癖になるので未だに飽きずにやってます。我が愛する大剣、真溜め斬りが気持ち良くて堪らんです。ちなみに本作のヒロインの武器は大剣です。(無理矢理繋げる)

堕とされたら二度と戻ってはこれない流刑地、棄界。仲間を殺した罪で棄界に墜とされた魔術猟兵の青年・イオリ。直後、巨大な化物に襲われたところを棄界の民……棄界人の少女・タビタに救われる。人とは少し違う容貌しているタビタは、髪の一部を大きな剣に変えて戦っていた。そんなタビタに気に入られたイオリだが、彼はこの棄界の何処かにいるであろう「ある人物」を捜す密命を帯びていて……。

ニリツ神のイラスト美しい。
もう読み始めてすぐに分かる榊一郎節というか。もう書いてるの間違いなく榊さんだよね、な作品でした。安心感というか、物語に道筋が立っているから読みやすい。反面、意外性がないのは良いのか悪いのか。

本来であれば戻ってこれない流刑地だけど、過去に落とされた王族を捜し出せば元の世界に戻してやる。そんなミッションを帯びたイオリ青年の物語であるが、危険な流刑地であるにも関わらず、どこか緊張感に欠けるのはイオリが手練れだからか。それともまあ始まったばかりの1巻であるからか。イオリが殺したらしい上官の娘・ユーフェミアは「父の仇!」と言いながらもイオリの背中を追いかけて棄界まで追いかけてくるデレっぷり。天然ケモノ娘のタビタは健気で可愛いし、イオリはもうずっと棄界にいてもいいんじゃね?、と思うレベル。

流刑地での荒くれ者とのバトルと陰謀もサクッと解決して一冊に収めてる安心仕様はやはり流石だった。この後の盛り上がりに期待。

「機動戦士ガンダム ヴァルプルギス 1」感想

機動戦士ガンダム ヴァルプルギス 1 (角川コミックス・エース)

〈あらすじ〉
宇宙世紀0089年 グリプス戦役、そしてハマーン戦争が終結し地球圏は平和を取り戻したかに見えたが…。サイド2の“オリンポスコロニー”に暮らす高校生の少年マシロ・オークスは、父トニオによって「物事に全力で取り組む事」を固く禁じられていた。マシロはその戒めを破り、才能を見せつけるかのようなゲームプレイ動画をアングラのネットワークに公開してしまう。それが危険を呼び込むとも知らず…。そしてエゥーゴの新鋭艦ユーロンが現れた夜、一条の光がオリンポスの外壁を貫いた。

ツイッターのタイムラインにRTされてきて、反射的に購入を決定しました。久しぶりにガンダム系の外伝作品読んだけど面白い作品は面白いよねえ。(当たり前)

舞台はグリプス戦役から続いた第一次ネオ・ジオン抗争終結から半年後。サイド2のコロニーで暮らす少年マシロは研究者の父から「本気を出してはいけない」という不可思議な厳命を課せられていた。しかしゲームで本気を出し、それをネットに投稿したことをキッカケに、マシロを狙う者たちが次々コロニーにやってくる。果たしてマシロの正体とは? そして新たなガンダムとは一体何なのか? 謎多きガンダムサーガ開幕!

機巧少女は傷つかない」の海冬レイジが脚本を務める今作。パプテマス・シロッコの怨念だったり、ハマーン・カーンそっくりさんが登場したりと死人が前へ前へと出てくるガンダムシリーズとなっています。まあ後者はフル・フロンタルみたいな強化人間の一種なのかな。

現状、分からないことだらけ。マシロはシロッコにまつわる存在らしいけど、え、あのシロッコさんですか? カミーユ先生の心を連れて行っただけでは物足りなかったんですかね。マシロの中にシロッコの魂(=心)がありそうな感じだ。ヒロインらしい女の子もマシロとまだ会話らしい会話なしだし。「ジ・Oガンダムになる」って帯も謎ではあったが、なるほど、そういうシステムなんですか。これはあれだ、親父、早く息子に話してやれよ……(死亡フラグ)

「妹さえいればいい。 9」感想

妹さえいればいい。 9 (ガガガ文庫)

〈あらすじ〉
相生初に続き、第15回新人賞受賞者たちの作品が続々と刊行された。那由多に憧れる笠松青菜もどうにかデビューを果たすのだが、待っていたのは酷評の嵐だった。伊月はそんな彼女の姿に自分のデビュー当時のことを思い出し、励ましの言葉をかける。一方、いよいよ放送が近づいてきた『妹のすべて』のアニメ制作ではさらなるトラブルが相次ぎ、京はいよいよ就職活動が始まり、千尋の前にもお掃除ロボットではなくちゃんと人間のライバルが登場する。大人気青春ラブコメ群像劇、妹がいっぱいの第9弾登場!!

ようやくタイトルに準ずる展開になってきたような。那由多とくっついて、トラブルはありながらも仕事はまあまあ順調である今、全てをひっくり返すにはやはり「妹」という爆弾が必要であった。

今回は「妹」続きの巻であった。特に青葉さんが伊月にデレるまでの流れはお約束すぎて好きです。しかし「お兄ちゃん」と呼ぶまでに仲が発展するとは思わなんだ……あとそれを容認する那由多も那由多でどうかしてます。まあこのカップルは基本、どうかしてるのだけど。

「妹」続きで鬱憤が溜まる千尋さん。真の妹なのに妹と言い出せないもどかしさよ。導火線に火がついていたところでこのラスト。まあドカンと行きますわね。これで「なにいってるんですかー」みたいな展開でなかったことにするのは無しの方向で(笑)

もう10巻の大台に乗るから安定せず荒波のような流れにして欲しい。

「りゅうおうのおしごと! 8」感想

りゅうおうのおしごと! 8 (GA文庫)

〈あらすじ〉
「そうだ。京都へ行こう」
順位戦が終わり、プロ棋界は春休みに突入した。八一はあいを伴って京都を訪れるが、しかしそれはデートでも慰安旅行でもなかった。『山城桜花戦』――女流六大タイトルの一冠を巡る戦いを見守るため。挑戦者の月夜見坂燎と、タイトル保持者の供御飯万智。
「殺してでも奪い取る」
「……こなたはずっと、お燎の下なんどす」
親友同士の二人が激突する時――八一とあいは女流棋士の葛藤と切なさを知る。春の京都を舞台に、華よりもなお華やかな戦いが繰り広げられる秘手繚乱の第8巻!

絶賛アニメ放送中なのに、「現実」が「物語」を飛び越えていくことで有名になってしまった本作。これはある種の褒め言葉だよねー。そだねー

今回は感想戦でお馴染みのお姉さんお二人メイン回……いやいやそれで一冊持つのか? と疑問だったのだけど、中身を見たら既に公開されている短編を繋ぎながらお姉さま二人の対決を描いていく形式。

今回は本編ではなく、あとがきに全て持っていかれた巻だったと思う。いや、驚きました。まさか……そんなラノベみたいな展開になっていたとは……!(誤解を招く表現)

とにかく、この言葉ですね。

ご結婚おめでとうございます!

「タタの魔法使い」感想

タタの魔法使い (電撃文庫)

〈あらすじ〉
2015年7月22日12時20分。弘橋高校1年A組の教室に異世界の魔法使いを名乗る謎の女性、タタが突如出現した。後に童話になぞらえ「ハメルンの笛吹事件」と呼ばれるようになった公立高校消失事件の発端である。「私は、この学校にいる全ての人の願いを叶えることにしました」魔法使いの宣言により、中学校の卒業文集に書かれた全校生徒の「将来の夢」が全て実現。あらゆる願いが叶った世界―しかしそれは、やがて犠牲者200名超を出すことになるサバイバルの幕開けだった。第24回電撃小説大賞にて“大賞”を受賞した、迫真の異世界ドキュメント。

第24回電撃大賞「大賞」作品になります。そういえば前回の電撃大賞作品全部読んだのに諸事情(怠け)によって感想書いてないから、妙な違和感がある。「前回の最終選考に残った作品かな?」とか思ったけど、そうか、もう2月なのか、と。

タタと名乗る異世界の魔法使いが弘橋高校に突如出現し、学園にいる全ての人間の願いを叶えると宣言する。「中学の卒業文集」に書いた夢がとんでもないカタチで具現化……教師を含めた弘橋高校の人々は、気がつくと校舎ごと中世ファンタジーの異世界へ。右も左も分からない異世界に放り出された彼等は元の世界に帰還するため、魔法使いタタを探すことになるのだが……。

設定は大好物。実際中身も好みだったけど、これは賛否が分かれる作品だなあ、と読み終えて思った。
物語は主役のひとりである高校生の姉の視点で語られるドキュメントタッチの作品。事件は既に「終わっている」ところから事件の検証を含めて「始まる」のが面白いポイント。しかしとにかく登場人物が多く、状況の考察を交えながら進んでいくので読みにくさが目立った。数行読み飛ばしてしまうと重要な情報が抜けてしまうことがあったりするので油断できない。そういう意味では情報(設定)の詰まった濃密な作品ではある。

願いのカタチ。先生になりたいとか自衛隊員になりたいとかバスケの選手になりたいとか、あるいは抽象的なものだとモテたいとか、おかしな願いだとヒーローになりたりとか。夢の叶い方はその願いの奥に込められた想いごと具現化している点が面白い。例えば単純に「サラリーマンになりたい」と願ったとしても、その願いの中に「商談に長けた優秀なサラリーマン」になりたい想いがあって、その願いが叶う。中には魔法使いや魔法少女になっている人もいるけれど、その願いの奥底にあるものを描いているのも面白いところではあった。

濃密な設定におけるサバイバルドキュメント。なのでもう少し展開の起伏が激しいともっと楽しく読めたかなあ。しかし新人賞作品にこれ以上の展開を求めるのは酷かな、とも思いました。締めのある設定(?)には笑った。